パラペットとは?役割とデメリット、メンテナンス方法を解説

パラペットとは?役割とデメリット、メンテナンス方法を解説

パラペットとは

パラペットとは平らな屋根などに設置された外壁のことです。具体的には、外壁と屋根の境界になる立ち上がった部分の事で、屋上やバルコニーに用います。「胸壁(きょうへき)」「扶壁(ふへき)」「手すり壁」とも呼ばれます。

近年人気の住宅デザインで、四角い住宅や屋根が見えない設計の住宅などに採用されており、木造住宅には見られない構造です。防水効果や見た目の良さ、外壁劣化防止効果などが挙げられます。

敷地いっぱいに建てたい場合にも有効な方法です。ただし、定期的にメンテナンスを行わないと劣化が早く進み雨漏りの原因にもなるので注意が必要でもあります。

パラペットの種類

一般的に使用されているパラペットの形状は、主に以下の3種類があります。

陸屋根のパラペット

平らな屋根の上にパラペットを取り付けたもので、建物の外周全てを囲むように四方に設置されます。防水性・耐風性に優れ、外壁の劣化を防ぎます。

建物の外観を美しく仕上げることができ、メンテナンスも比較的に容易で人気があります。学校の屋上や商業ビルなどにも採用されます。看板を設置しやすくなるのもいい点です。

傾斜屋根のパラペット

外観は陸屋根に近く四角いですが、パラペットの内側に傾斜屋根があります。屋根の勾配が低い場合はパラペットを設置することで屋根が隠れ、目隠し効果があります。

雨水は屋根の頂部から下端に施工された雨どい流れる仕組みです。パラペットは三方向~四方向に設置されます。すでに屋根がある住宅に新たにパラペットを設置するパターンで多い形状です。

三方パラペット

三方パラペットも同じく内側に傾斜屋根がありますが、ハの字型の屋根ではなく一方向に傾斜のある片流れの屋根です。太陽光パネルの設置にとても適した形状と言えます。

勾配の効果で室内に空間ができ、明るく開放感のある部屋になります。また、屋根の形状が非常にシンプルなので建築コストを抑えることもできます。

パラペットの役割とメリット

パラペットには以下のような役割やメリットがあります。

雨水による外壁劣化の防止

パラペットは建物の屋根やテラスなどの周囲を囲い雨風の影響を軽減する役割を持ちます。パラペットには雨水を停滞させないために排水溝が設置されます。

もしパラペットがないと雨水は建物の外壁を伝って流れ落ちてしまいます。外壁や窓は雨の影響を受けやすいですが、パラペットを設置することで建物自体の劣化を防ぐことができるのです。

陸屋根の防水性能向上

陸屋根(ろくやね)とは傾斜のない平面な屋根の事で、ビルや学校の屋上をイメージすると分かりやすいです。

傾斜のない屋根は、雨水や雪解け水が滞留するため、屋根の防水が特に重要です。パラペットを設置することで防水性が向上します。

外観デザイン上の配慮

パラペットにより建物のデザインがより自由行えます。特徴的な屋根がないことで、見た目はすっきりとした印象になり、外観や高さ、形状を強調することができます。

看板の設置も簡単なので、商業目的の建物にもよく見られます。屋上に設置した室外機を隠すこともできます。

陸屋根でデザインの場合、施工内容によって人の歩行も可能なので有効活用できる空間を増やせます。建物を敷地いっぱいに建築したい際にもよく用いられます。

風による被害の軽減

日本に昔からある木造住宅の屋根の場合、主に瓦などの屋根材が使用されています。この場合、屋根が風に巻き上げられて飛ばされる危険性がありますが、パラペットが盾になり、その被害を防ぐことができます。

また、屋根の形状によっても風の影響を受けやすいですが、既に屋根のある建物にパラペットを設置することで同様の効果を期待できます。

人や物の転落防止

パラペットそのものは比較的低いですが、法律や建築基準に従って高さを上げたり、柵やネットを設置することで人や物の転落を防ぐことができます。

パラペットのデメリット

見た目が良くなり、居住空間をより確保できるなどメリットの多いパラペットですがその一方で以下のようなデメリットもあります。

笠木(天板)からの雨漏り

笠木(かさぎ)とはパラペットの最上部の施工で必要な仕上げ材の事です。パラペットを覆って雨風から守る役割がありますが、この笠木が劣化するとさびや亀裂発生し、雨漏りの原因になります。

内樋(うちどい)の劣化

内樋(うちどい)とはパラペットの立ち上がり部分と屋根との接合部分のことです。内樋には雨水や砂埃、ごみが集まるため、劣化しやすい部分です。雨水がきちんと排出されず、溢れかえっている状態をオーバーフローと言います。

防水層の浸食

新築時に施工された防水加工は紫外線や雨風などにさらされることによって自然に経年劣化していきます。そのまま放置しているとひびが入り、そこから雨水が浸食してしまいます。

メンテナンスの目安は?

パラペットのメンテナンス時期の目安として、これらの項目に1つでも該当する場合は早急に専門業者に点検してもらうことをおすすめします。

・天井にシミがある、クロスが浮いている

天井に水分がしみ込んだようなシミがある場合や、壁紙がデコボコしている場合は要注意です。すでに建物のどこかで雨漏りが発生しています。特定するために専門業者に依頼しましょう。

・雨の後に水が溜まっている

雨が降った後に排水が不十分で水溜まりができてしまっている場合は、排水溝が詰まって逆流している可能性があります。また屋根そのものの勾配不良が原因になる場合もあります。

・笠木が錆びている、ひび割れがある

本来パラペットを守るために取り付けられますが、紫外線などの影響を一番受けやすい部分でもあります。錆び穴やひび割れから雨水が内部に侵入しカビ発生の原因にもなります。

・サッシ周りの外壁が剥がれている

パラペットの防水機能が低下していたり、ひび割れが起きてると雨水が外壁を伝って落ちるため、外壁の劣化も早めてしまいます。この場合は外壁の塗装も併せて行い修繕します。

・防水シートに浮きがあるもしくは一部剥がれている

防水シートで仕上げている場合、劣化することで表面が波打っていたり、一部が剥がれてしまいます。踏むと変形する場合も同様です。

コンクリート内の水分が水蒸気化して防水層を押し上げる現象もあり、この場合は膨らみが発生します。

・植物が生えている

植物の繁殖力はとても強く、根はコンクリートを突き進んでしまいます。そうなると、割れた部分から雨水が浸食してしまいます。排水溝周辺は湿気やすいので苔やカビも生えやすい環境です。

・表面が色褪せている、傷がある

表面が色褪せているということは防水機能が低下しているサインです。また、飛来物や植木鉢などを引きずって傷ついている場合も傷の深さによって修繕が必要です。

自然災害による被害の場合は、火災保険で修理できる可能性があります。

・耐用年数が近くなっている

パラペットの耐用年数は約10年ほどと言われていますが、海が近い(塩害)など、土地の気候によって、耐用年数を迎える前に劣化している場合があります。

見た目には問題なく思えても、専門業者が点検するとひび割れや錆が見つかることがよくありますので、かならず定期点検をお願いしましょう。

パラペットのメンテナンス方法

パラペットは屋根や外壁と同様に雨風や紫外線など自然環境の影響を受けて劣化していきます。

パラペットの雨漏りや劣化は、建物全体の構造に深刻な影響を与えるため、定期的なメンテナンスが大切です。

定期的な清掃

パラペットを定期的に清掃することで、傷んでいる箇所や劣化している部分を早期発見し雨漏りなどのトラブルを未然に防ぐことができます。

集中豪雨や台風のあとは特に注意が必要です。真下は室内の場合が多いのでメンテナンスを怠ると、被害に直結します。清掃では箱樋(内樋)や排水溝のゴミつまりを確認し取り除きます。

排水溝やその周辺は苔や植物が繁殖しやすい環境です。放置していると根が浸食し、パラペットの防水層に到達してしまうこともあります。自分で屋根に上がり清掃を行うのは大変危険ですのでやめましょう。

業者に依頼すると作業内容により1万~3万円程度の相場で清掃してもらえます。

塗装による補修

防水性を一定に保つためには定期的な塗装が重要です。塗装を行う前に、すでに発生している錆びや汚れを落とし、コンクリートが脆弱になっている箇所は除去して、当て木で型枠を作ります。

露出した鉄筋には錆止め剤を塗り、錆の進行を防ぎます。その後はモルタルを型枠内に複数回に分け、少しずつ丁寧に入れます。しっかりと乾燥させてからトップコートを塗り重ね、防腐処理も行います。

また、最上部にある笠木の定期的な塗装やつなぎ目をコーキング(シーリング)補修することで、大掛かりな修繕を回避することができます。

防水シートの張替え、防水塗装

陸屋根の場合の防水方法は、シート防水・塗膜防水・アスファルト防水の三種類があります。施工すると耐用年数も長いので経済的です。

シート防水はゴム製や塩化ビニール製の防水シートを重ねることで屋上の劣化を防ぎます。塗膜防水は防水塗料を塗ることで膜(防水層)を形成する防水工事です。

ウレタン防水やFRP防水などと言われます。アスファルト防水は学校や大型商業施設など屋上が広い建物に採用される方法です。

液状の溶解アスファルトとアスファルトシートを重ねて厚みのある防水層を何層も作り、強固なものにします。日本に古くからある防水工事の方法です。

パラペットが劣化した場合の工事内容と費用相場

パラペットでメンテナンスの対象になりやすいのが、笠木、内樋、立ち上がりの部分です。頻繁に行うわけではないので費用面も気になるところです。

ここではパラペットの修繕工事、防水工事の具体的な内容と費用相場について解説します。(撤去する廃材がある場合別途費用がかかります。)

・コーキング(シーリング)補修

一般的な戸建てやマンション、商業ビルや学校などあらゆる場所で幅広く使用されているのが、コーキング剤(シーリング材)です。施工業者によっては見積書でコーキング処理(シーリング処理)と記載している場合もありますが、どちらも意味は同じです。

屋内外を問わず使用され目的に応じて様々な種類があります。屋根や外壁の修繕にも欠かせない存在です。穴や隙間を埋める役割を持っています。

パラペットの場合は笠木の継ぎ目や防水層との隙間を埋める際に使用します。しかし、コーキング剤(シーリング材)だけでは十分に防水機能があるとは言えない為、他の防水工事と併せて行われることが多いです。単位はmで単価は500円~です。

・笠木の補修、取り替え

笠木には「木」という漢字が入っていますが、耐久性や耐風性などが求められることから、ステンレスやアルミ、銅板などの金属が用いられます。

劣化が部分的な場合は塗装やコーキングで済みますが、全体的に錆びていたり、浸食で浮いている場合は撤去し新しい笠木を設置します。

笠木の不具合を放置してしまうと、下地やパラペット本体、外壁など丸ごと修繕が必要になるケースもあります。

笠木のコーキングは1万円~、釘やビスの緩みの修繕は1万円前後、交換の場合は1万~10万円程度で範囲によって費用が変わります。笠木が原因ですでに雨漏りが発生している場合は、10万円~30万円前後です。

・板金施工による内樋の修復、取り替え

内樋は箱樋とも呼ばれ、形状がくぼみになっていることから、砂埃やごみ、落ち葉などの飛来物が溜まりやすく、定期的な清掃と塗装が必要です。劣化がひどい場合はそのものを新たに取り替えます。

金属屋根の工事は板金工事と呼びます。昔の建物は内樋(箱樋)にブリキが使われていることが多く、お寺や神社、古い建物には金属製の雨樋(箱樋)が今も残っています。

現在の主流は樹脂製ですが、耐久性に優れているため、新築でも選ぶ場合があります。パラペット工事関係にすべて言えることですが、一般の方がDIYを行うのは非常に危険ですのでやめておきましょう。

継ぎ目補修や塗装の場合は5千円~2万円、一部交換は3千円~5千円(1mごと)、すべて交換する場合は15~60万円が相場です。

・防水シートの張替え

陸屋根で施工される防水シートは耐用年数が長い分、劣化に気づくのが遅くなりがちです。作業の難易度が高いので信頼できる業者を探すことが重要です。

基本的には既存防水層の上に被せるカバー工法になります。おすすめは塩ビシート防水です。厚みが均一な防水層ができ、トップコートによる定期的な塗り替えも不要、耐候性に優れているため、カラスなどに表面をつつかれて損傷する「鳥害」が少なくなります。

さらに、防水層の上に保護材を設置することで人が問題なく歩行可能になります。なお、防水シートによる工法は複雑な形状の屋根には適さないので注意しましょう。費用は4千円~~7千円(㎡)程です。

パラペットに関するよくある質問

見た目は大丈夫そうなので放置していてもいいですか?

パラペットやその周辺は見た目には分からないクラックや継ぎ目のコーコング剤(シーリング材)が劣化している場合があります。定期的に点検をしてもらうことで大規模な修繕工事を防げます。

小さなひび割れ見つけました。ホームセンターのコーキング剤で埋めてしまってもいいですか?

ご自身での修理はお勧めしません。対象が屋根で高所作業になるということと、たとえ低い雨樋の作業であっても慣れていない人にはかなり危険な作業です。また、適正に処置を行わないとすぐに剥がれててしまうこともあります。

屋根勾配ってなんですか??

屋根勾配(やねこうばい)とは屋根につける傾斜のことです。 傾斜が緩やかな屋根、緩勾配(かんこうばい)は風の影響を受けにくく、落雪防止効果もあります。急勾配な屋根の場合、修繕が必要になった時に作業員の危険性が増すため費用が割高になることがあります。

笠木は必要ですか?

笠木がないとパラペット上部は直接、直射日光や雨風を受けることになります。必然的に劣化が早まり、壁に染み込んだ雨水によって室内にも被害が出る可能性があります。笠木は必要と言えるでしょう。

パラペットの高さはどれぐらい必要ですか?

パラペットに必要な立ち上がりの寸法は用途によっても変わってきますが、600mm程度です。本来の目的は防水なので、屋上を人が歩かない場合は高さはさほど必要ではありません。

板金部分の釘が浮いていたので打ち込んでいいですか?

下地が劣化している可能性があります。打ち込むだけでは解決しないので、自己判断せず、専門業者に相談しましょう。

雨漏りしやすいポイントはどこですか?

雨漏りしやすいのは笠木、パラペット(胸壁)と屋上の接合部分、雨樋、飛来物やゴミで詰まりやすい排水溝の先の排水口、ドレン周辺です。笠木や接合部分にひび割れがある場合、すでに雨水が内壁に浸水している可能性があります。笠木が浮いていないか、錆がないか、接合部分に剥がれが起きていないかなど業者にしっかりチェックしてもらいましょう。

結露がひどくなった気がします。

パラペットは密着している分、外壁の通気がとりにくい傾向があります。必然的に壁内の結露のリスクが高くなります。また、室内の湿気が天井裏やパラペットに流入し、起こることもあります。この場合は湿気の漏気を防ぐ断熱施工を行ったり、パラペットに設置できる専用の換気部材で改善できますので専門業者に聞いてみましょう。

天井にシロアリがいます。

シロアリは床下で発生するイメージがありますが、実は屋根にもシロアリが発生します。雨漏りを放置していると、建物の木材部分が湿気を多く含んでしまい、シロアリの繁殖にとって好都合になります。外壁やサッシの雨漏りでも起こりうることですが、そもそもの原因がパラペット本体やその周辺にある場合はまず、そちらを修理しなければ解決しません。

パラペットの修繕と外壁塗装は一緒にしてもらえますか?

可能です。各工事の度に足場設置が必要なので一緒に行えば工事費用を安く抑えることができます。ランニングコストを考えると同時に行う方がメリットが多いでしょう。

火災保険は使えますか?

自然災害や強風の影響で屋根や外壁が被災した場合に、修繕費用が保険の対象となる場合があります。雨漏りの原因が台風や強風だった際も適用されることがあります。ただし、火災保険の加入内容は人それぞれです。契約内容によって異なりますので保険の確認や見直しを行ってください。

自治体の助成金は使えますか?

お住まいの地域や工事内容によっては自治体から助成金が出る場合があります。対象となる建物や適用条件が地域によって異なる為、施工業者に相談してみましょう。事後申請ができないので注意が必要です。

まとめ

パラペットの雨漏りや劣化は建物全体の構造に深刻な影響を与えるため、ポイントを押さえた定期的なメンテナンスが必要です。早期に問題を解決することで、修理費用を抑えることができます。

耐久性を向上させれば、結果として、長期的なメンテナンス費用を削減できます。

また、将来売却を検討しているのであれば建物の価値を維持することは必須と言えますので、パラペットがどのような役割を果たしているのか理解しておくことはとても大切です。この記事が長く快適に過ごすためのヒントになれば嬉しいです。